第2章 リハビリの基礎知識


1 鳥の基礎知識
 

【鳥の骨格】 下に人間と比較して鳥の骨格を図に示す。

鳥の 手首@ ひじA 肩B ももC ひざD すねE かかとF
はどこ?

鳥の骨格人の体


 鳥の「もも」と「ひざ」は体の内側にあり,外からは見えない。

 地面に接している部分は「ゆび」で、つまり人に例えると,鳥はつま先で立っていることになる。翼や脚を動かす際は、どの関節がどちらに曲がるかを間違わないようにしなくてはならない。

人との大きな違いの一つは、竜骨突起と呼ばれる胸部の大きな骨である。鳥は飛ぶために,「鳩胸」ともいわれるように強い胸筋がよく発達している。この胸筋を支える骨は,胸骨と竜骨突起,烏口骨と呼ばれる骨である。

 特に竜骨突起は,強大な胸筋をしっかり固定しているの顕著である。また,飛べない鳥(ダチョウetc.)には,この竜骨突起はない。

 陸上生活をあまりすることのない海鳥を、長期間ケージ内で飼育するとこの竜骨突起が床に当たる部分に床ずれ状の怪我を起こすの注意が必要。
 

【やせた鳥,太った鳥】

 リハビリの際、海鳥の健康管理で体重管理は重要であるが、大型の鳥では野外での体重も個体差が大きく、また、野外での健康な個体のデータも不足しがちで、適正な体重を決めるのに苦労をする。その際判断基準となるのが胸部の肉付きである。

 胸の部分を外部からさわってみて、竜骨突起の周辺の肉付きで判断する事が出来る。


           ちょうどよい鳥          
ちょうどよい鳥
やせている鳥                  
(竜骨突起に触れます)           
太っている鳥
(皮下脂肪がついてきます)       
やせている鳥     太っている鳥



*鳥の体の断面を正面から見た図です。

 

【みずかき】

 また,海鳥の脚には,泳いだり,潜ったりするための「みずかき」が発達する。そして鳥の種類によって,様々なみずかきがあり、種類の識別の助けにもなる。


ぼくそく-クロガモべんそく-ハジロ


 重油が付くと油焼けと呼ばれる潰瘍状のものが出来たり、長期間の陸上飼育下では、脚や水掻きが乾燥のためひび割れてボロボロになる個体が現れる。洗浄等で羽毛の状態は回復してもみずかきの損傷がひどいものは、野外での自力採餌ができないため放鳥が出来なくなる。また、傷口からの細菌感染で死亡する個体も現れるので注意が必要である。
 

【消化器】

 鳥が食べた物は,口→食道→そのう→腺胃→筋胃→腸管と流れていく。食道は,気管(舌の付け根に入口がある)のだいたい後側を走っている。

そのう:食道が少し膨らんだところ。植物の種や葉を主食にする鳥と,
     魚などを主食にする鳥では,このそのうの大きさが違うなど鳥の種類に
     よって違いがあります。


腺 胃:消化酵素が分泌されるところ。

筋 胃:砂のうとも言い,厚い筋肉の壁でおおわれ,
     消化酵素と混ざった食べ物を砕いてすりつぶし,どろどろにするところ。


 鳥にチューブなどを用いて,強制給餌をする時は,そのうまたは胃までカテーテルを挿入する、その際、まちがって気管に入れないように十分注意すること。
(第4章給餌方法に詳細)


 油の付いた鳥は、油がついた羽を羽づくろいすることにより,油を体内へ摂取することになる。その場合、以下のような症状となる。

 気道または消化管に詰まる(閉塞)→死

 腸などへのダメージや貧血(油の毒性による),肝機能障害などで下痢(血便),食欲不振,抵抗力の低下を引き起こし、衰弱,感染症または中毒死にいたる。

 そのため、海岸での保護収容後、活性炭の粉末を呑ませる等の手当が必要である。また、リハビリの際の血液検査や糞便検査は油の毒性による傷害の回復の目安として必要となる。


消化器
 


【羽 毛】

 鳥と特徴づけるもので、飛ぶためはもちろん、きびしい外界の刺激(雨,紫外線,寒さなど)から体を守ったり、繁殖の相手をひきつけるためなど、彼らの生活に欠かせないものである。


★羽の構造

 鳥の体の外側をおおう羽(正羽)は,1本の羽軸を中心に2回枝分かれ(羽枝と小羽枝)の構造を持つ。

 小羽枝の先には,数個の小鉤があります。これが隣り合ったいくつかの小羽枝とからみあって,平面的な膜(羽弁)を作る。

 この構造は,飛ぶ時の風のすり抜けと外界からの刺激をシャットアウトして,その下の柔らかい羽毛(ダウン)と体を保護するものである。

 海鳥の羽には,この構造に加えて,羽枝の腹面から薄い膜ができて羽弁との間に気室が作られ,浮力が産まれ,ワックスを塗れない内側からの羽濡れの防止のために実に見事なつくりをしている。

羽の構造


★羽づくろい

 くちばしや脚の爪を使って、羽の汚れの除去に始まって,羽の形状を保ったり,羽枝の鉤をかけ直しながら,羽の構造と羽列を整える。そして,仕上げに尾羽の付け根にある尾脂腺から分泌されるワックスを外側の羽に塗る。

 海鳥は、巧みな羽根の構造とこのような,羽づくろいにより羽毛の撥水性を保ち、冷たい海の上でも、まるで空気の泡の中にいるような状態を作り出し、保温と浮力を維持している。

 油が羽につくと,ベタッとなってしまい,人間で例えれば,濡れたセーターを着て,海にいるのと同じ状態になる。また、空気の層を作ることにより浮き袋の役目をしていたものが,ぺったんこになってしまうので浮けなくなる。このため、急速に体温を奪われ衰弱したり、海岸にあがってきてしきりにはづくろいを行っている個体が保護される。
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